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オバマケアは米市民を救えるのか

 4月1日オバマ大統領は、医療保険改革法(通称オバマケア)の下、民間医療保険に710万人が加入したと発表した。野党・共和党の大反発をおしきり発動しただけに、3月末で当初の目標以上の加入者が見られたことに、オバマ氏のスピーチは自信にあふれた勝利宣言となった。「これからアメリカ人は病気になったからといって、自己破産することはない」と、オバマ大統領は胸をはって医療保険改革法施行を語ってきた。だがこれで、米国人の高額な医療費への悩みが消えるわけではない。
 
 米国では多くの人が雇用主を通して医療保険に加入する。雇用者からの保険に期待できない中小・自営業者などは個人で民間保険に加入。また公的医療保険機関としては、65歳以上向けのメディケアや低所得者向けのメディケイドがある。だが、いずれにも入れない無保険者は昨年で約4800万人だった。

 その無保険者を救うため、オバマケアは政府主導の手頃な市場を提供し、国民に保険加入を義務づけようと立てられた。同法の核心はオンライン民間保険市場の「エクスチェンジ」だ。保険料支払いが困難な者には政府補助金を出して保険購入させる。「エクスチェンジ」には4プランがあり、保険料、年間免責額、加入者負担率は異なる。加入者負担率は保険料が最も安い保険で40%、段階的に10%ずつ下がる。最も人気が高いといわれる保険料が2番目に安いシルバープランで、全米平均月掛け保険料は個人で328ドル。これは州、年齢、収入に応じて変わってくる。

 オバマケアにはいくつか認められる点はある。まず保険会社は既存疾患で患者を拒否できない。第二に予防医療など10項目を必須条件に挙げている。さらに個人年間負担額はどのプランも6350ドルが上限。

 だが、個人負担額の上限があるのはいいが、免責額が高い。免責額は2500ドルから5000ドルで、月々の保険料が安ければ安いほど免責額は高くなる。免責額が5000ドルのプランを選べば、最初の5000ドルまですべて全額自己負担である。つまり5000ドル払ってから保険適用となる。さらに、処方箋薬など対象になるのは規定リストに上がっている薬に限られ、それ以外の場合には全額自己負担という。

 オバマ大統領はスピーチで、無保険者の内710万人が保険加入したともとれる話しぶりだった。だが、多くは以前加入していた保険からの切り替えだ。というのも、オバマケア規定の条項を含まない保険は今年から無効とされ、加入者はオバマケア下の「エクスチェンジ」に移らざるを得なくなったからだ。

 また、オバマ氏は低所得者層向けのメディケイドの拡充も成果の一つと強調した。このメディケイドはオバマケアの柱の一つ。連邦政府規定の貧困ライン(4人家族で23850ドル)の幅を138%にまで拡大することで、無保険者の半分がメディケイド適用を受けられるはずという。また、メディケイドは今迄子供のいない成人には適用されなかったが、この拡充で対象範囲が広がる。

 しかし、まだテキサスなど21州が頑固に拡充拒否をしている。拡充考慮中の3州を加えると24州は拡充していないことになる。すべて共和党州。その該当数はテキサスの120万を含む約480万人ともいわれる。共和党は「財政圧迫だけでなく、米国民の選択肢や自由を奪う」とオバマケア施行の延長・撤廃を求め、昨年10月半ばまで予算交渉は決裂し、一部政府機関は閉鎖にまで陥ったほど。現行のメディケイド適用を受けるほど貧しくないが、エクスチェンジで保険購入できる余裕のない者が、またこの隙間にすべりこんでしまう。

 オバマケアは手頃な保険料を売りにしているようだが、その前に米国での無謀な高医療費が市民を苦しめている。度を超えた高医療費への不満はよく耳にする。日本の医療費に慣れた者からすれば、言葉は悪いが「ぼったくり」。

 私は昨年2月追突事故でアリゾナ州バッカイの病院に1時間ほどいた。腰のレントゲン写真を撮り、待ち合い室で待つことは許されず、治療室の一つで医師からのレントゲン結果を待った。問題なしで放免されたが、後できた請求書には病院に2000ドル、医師に440ドル、レントゲン技師に98ドル。あと半ば強引に勧められて病院まで30分間乗った救急車の費用が1530ドルだった。

 最近の米ABCニュースで、盲腸の手術で5万ドルも請求された例を挙げていた。昨年10月、20歳のカリフォルニア州の男性が、サクラメントの病院で手術を受けた。病院からの請求書は計55029ドル。彼は民間保険加入者で多くを保険会社が払ったが、それでも病院に11119ドルの借金が残った。手術費用は16277ドル。術後2時間いただけだが、回復室の使用料は7501ドルだったという。

 オバマケア下では、上限6350ドルということで、彼のように11000ドルも払うことはなくなるだろう。その点では自己破産するケースは減るかもしれない。だが、そうだとしても免責額の高さにつぶされる人もでてくるだろう。健康な若者で病院へ行かない人は保険料を払うだけでいいが、持病がある人に5000ドルまで自己負担というのは痛い。

 昨年度米GDPの20 %、2兆8千億ドルが医療にまわったといわれている。多くの米国人は高い保険料を払い、その割には手術で入院しても盲腸程度なら1泊で帰ってくる。病院へ行く度に、常にいくら費用がかかるかを気にしている。

 オバマ氏の医療保険への意気込みはわかる。だが、国民皆保険を実現できなかったところで、オバマケアは不完全だ。65歳以上の公的医療保険制度メディケアを全国民に広げることを期待したが、結局政府誘導のランク付けされた民間保険市場となった。それに入れない者はまた切り落とされてしまう。

 加えて、共和党は隙あればオバマケアを破棄しようと待ち構えている。同党ベイナー下院議長は、オバマケア撤廃に向けて今後も戦い続けるという。2党の狭間で99%の一般市民は病気にもなれないようだ。

マクレーン 末子

ブロッガー。2000年に渡米、現在アリゾナ州に在住・・・続きを読む

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