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銃規制は進みそうにない米国の現実

 14日コネティカット州ニュータウンの小学校で起きた銃乱射事件は全米に衝撃を与え、各地で追悼会は開かれ、学校のセキュリティー強化や銃規制論議が始まるなど、その波紋は広がっている。市民の間では銃論議は活発となり「銃規制すべき」「もっと多くの銃で犯罪は減らせる」といった意見に加え、元州知事による「神をないがしろにしたから事件は起きた」というコメントまで飛び出している。

 オバマ大統領は14日事件に言及し、「胸が痛む」と感情をこらえきれずに涙を幾度かぬぐった。「これらの悲劇を防止するために、団結して意味ある行動を起こさなければならない」と話し、16日の追悼会でも「このような悲劇にはもう我慢できない。銃暴力を終わらすために我々は変わらなければならない」と述べた。

 オバマ氏は「我慢できない」と言うが、一般市民も銃犯罪には辟易している。オバマ政権下では、5件の乱射事件が起こっている。その中の一つは2011年アリゾナ州ツーソンで起こったギフォーズ元下院議員の射撃事件。ギフォーズ氏は一命をとりとめたが、一般市民6人が巻き添え犠牲となった。今年7月のコロラド州の映画館で、12人が犠牲となった事件はまだ記憶に新しい。その度にオバマ氏は再発防止を口にしてきたが、具体策はとられてこなかった。それどころか、国立公園などでの銃携帯に関する連邦銃法を緩和し、銃規制派から批判を浴びてきた。

 銃規制派で知られるニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長は、オバマ氏の14日のスピーチに応え「意味ある行動を呼びかけるだけでは不十分。すばやい行動が必要。再発防止という言葉は今までも聞いてきた」と手厳しい。

 今後どれだけ「すばやい行動」ができるのか疑問だが、今回20人の小学一年生を含む26人の命が奪われたこともあって、民主党議員を中心に銃規制論議は高まってきている。その中に、2004年で期限切れの攻撃用銃禁止法の再導入に取り組む動きもある。

 また非営利団体CREDOは、事件後沈黙を保っている全米ライフル協会(NRA)に対して抗議活動を始めた。NRAは、憲法修正第二条の「武器保有権」を擁護するロビィスト団体。CREDOは17日ワシントンDCの国会議事堂からNRA事務所まで「NRA、恥をしれ」と唱和しながら行進。「NRAは恐ろしい殺人に加担している」と気炎を上げた。米ABCニュースによると、NRAが今年ロビー活動に費やした金額は220万ドル(約1億8500万円)。これらの金額は、個人の複数ライフル購入を政府が監視するのをストップさせようとする法案推進や、ネットでの弾丸購入禁止の法案化阻止に使われているという。

 では、一般市民の銃規制への考え方はどうだろうか。90年代に活発だった銃規制論は最近あまり聞かれなくなってきていた。ピュー・リサーチ・センターの銃規制に関する世論調査によると、1999年のコロラド州コロンバイン高校で12人が犠牲となった乱射事件後では、65%が銃規制に賛成、反対は30%だった。一方、今年7月のコロラド州での銃乱射事件後では数字は大きく異なっている。47%が銃規制に賛成、反対は46%だった。

 また、党派別に見ると、銃規制への見方に大きな隔たりがある。7月のコロラド州乱射事件後、共和党員の間では27%が銃規制に賛成、71%が反対と回答した。民主党員の間では、72%が銃規制に賛成、21%が反対と、共和党員と逆の調査結果が出ている。

 このように民主党員の間で銃規制の声は高まっているが、一方、銃保有の権利擁護派は「もっと多くの銃で犯罪は防げる」と主張する。ルイ・ゴーマート下院議員(テキサス州選出)など反銃規制派は「すべての教師よ、武装しろ」と言う。

 これに同調するのが、保守系の著作家アン・コールター氏。14日の事件後「銃による犠牲を減らすには銃を隠して携帯すること」とツイートした。十分にトレーニングされた教師や学校関係者が銃を常に持っていれば、容疑者から子供を救えたはずというのだ。

 最近多くの州では銃法緩和の傾向がある。13日には、ミシガン州は隠してピストルを携帯する許可書使用範囲を拡大する法案を可決した。新法では、学校などかつては禁止されていた地域に、許可書があればピストルを携帯できるという。同法通過の背後には、もし事件が起こった場合、銃携帯していれば応戦し犯行をストップさせることができるという考え方がある。この考え方をエスカレートすれば、米市民は誰しもが銃携帯許可書を得て、来るべき銃撃戦に備えるべきということにならないだろうか。

 さらに、この事件に及んで元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビー氏は、「神」を持ち出した。事件後保守系フォックスニュースで、「人々はなぜこのような事件が学校で起こったかと問うが、我々が組織的に学校から神を取り除いてきたから。暴力が起こっても驚きではない」とコメントをした。後にトーンを下げはしたが、事件は公立学校から宗教を外したことが原因。だから新銃法案を作るより、学校教育に宗教の時間を入れる方が重要ととれる。

 このように、銃規制・銃保有の権利擁護と意見はさまざまだが、今回の事件で攻撃用銃禁止法は復活するかもしれない。しかし、攻撃用銃を禁止しても、それで銃乱射事件がなくなるとは考えられない。攻撃用銃がなくても、簡単に手に入り殺傷力も強い半自動ピストルがある。弾倉には16弾丸を込めることができる。弾倉を変えるのにさほど時間はかからない。昨年10月のギャラップ 社の世論調査では、47%の家庭が銃を保有していると回答。推定で2億とも3億とも言われる銃が一般家庭にあるという。保有する理由は「自衛」。この高い銃保有率を考えると、徹底した銃規制がなされるのは不可能に近いだろう。

 11月の感謝祭明けから米国ではクリスマスショッピングが始まった。銃もクリスマスプレゼントに人気の高い品の一つだ。米国では正規に銃購入する際、FBIによる身元チェックが必要。感謝祭明けの11月23日一日だけで、銃購入に際して154000件の身元チェックがFBIに寄せられたという。ということは、一日で15万以上の銃購入希望があった。すべてがFBIの身元チェックにパスするわけではないが、かなりの数の銃が販売されたことになる。

 コネティカット州の事件後、銃規制が叫ばれるにつれ銃愛好家たちは銃店に走り、今回犯行に使われたような攻撃用銃AR15が飛ぶように売れているという。

マクレーン 末子

ブロッガー。2000年に渡米、現在アリゾナ州に在住・・・続きを読む

4 responses to “銃規制は進みそうにない米国の現実”

  1. まさ

    マクレーン未子さん

    もはや打つ手なしでしょうかね。
    まあ、これから金融危機において混乱するアメリカ国内での自衛手段としては必要不可欠な物となるのかもしれませんね。
    今日も日本のバラエティTVで海外の衝撃映像としてアメリカでの銃を持ったネットカフェ襲撃連中を銃を持った71歳のお爺さんが発砲して追い払ったものや、SWATが犯人の銃を狙撃して事件を解決したとの映像が流され、なんかこれも銃擁護の一端なのかと思ってしまいました。
    通常の感覚からすれば、銃での事件が起きたのだから銃を規制して安全を確保しようという発送かなと思いますが、銃利権と銃神話に洗脳されている人たちにとっては、それならそれに対応出来る武装警備や対応できる武器が必要となるのでしょうね。いっそのこと子供に銃を持たせればいいのではとさえ思ってしまいます。
    まるで、銃が法律とでも言う西部開拓時代の再来でしょうか?
    そのとばっちりが隣国のマフィアやアンダーグラウンドの組織や個人に流れているように聞いております。

  2. Ranko

    米国と陸続きのカナダでは銃の所持が合法(携帯は原則禁止)ですが、米国ほどの銃犯罪は起きていないようです。現在、米国某都市のダウンタウンに滞在中ですが、比較的犯罪率が低いとされているにもかかわらず、先月近所で発砲がありました。その数20発。興味深いことに、少し郊外にいくと凶悪犯罪はほぼゼロで万引きかDV程度だそうです。車上荒しすらありません。

    目先の、ある程度の銃規制も大事ですが、長期的には何故アメリカで(銃を使うと使うまいと)犯罪率が高いのか?を検証し直視する勇気が米国民が持てるのかが問題解決の鍵だと個人的には思います。

    民主主義のリーダーを自認するこの国は、一方では「勝てば官軍」の国でもあります。勝者はその立場を強固にするため、極めて封建的に振舞うのはなんとも皮肉であり、この国のダブルスタンダードでありましょう。

    愉快犯的な銃による殺人もありましょうが、敗者や抑圧された者の絶望に起因する大量殺人が、米国で目に付くように思うのは私だけでしょうか。

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