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「もっと銃を」米銃依存社会の恐怖

 米国で立て続けに起こった銃乱射事件を受けて、民主党議員により銃規制法案が提出されたが、銃規制を叫ぶ声は高まらない。それどころか、銃規制反対派の州知事たちは「自衛に銃を持とう」と呼びかける。またノースカロライナ州の保守草の根運動「ティーパーティ」は、11月の選挙資金集めも兼ね「機関銃パーティ」を開き、銃所有の権利擁護を推進するという。

 銃犯罪は珍しいことではないが、最近乱射事件は立て続けに起こっている。7月20日のコロラド州映画館での12人死亡、58人負傷事件、8月5日のウィスコンシン州の白人至上主義者によるシーク教寺院での6人死亡4人負傷事件。9日のアラバマ州のストリップクラブでの3人射殺事件。そして13日テキサスの住宅街での警官を含む3人射殺事件。コロラド事件の2日前にはアラバマ州のバーでは、乱射で少なくとも17人が負傷した。

 これらの事件には、オバマ大統領も大統領選共和党候補内定のロムニー氏も「遺憾」を表すが、何らかの策を講じるようでもない。オバマ大統領は銃暴力を防ぐことに集中するが、既存する銃法内でという姿勢だ。
 
 そのような中、民主党のフランク・ローテンバーグ上院議員とキャロライン・マッカーシー下院議員は、7月末にネットでの銃弾の購入制限を盛り込んだ「オンライン銃弾販売阻止法案」を提出した。コロラド州の事件で殺人罪に問われているジェームズ・ホームズ容疑者が、ネットで銃弾6000発以上を購入していたことから、ネット販売規制を求める声が上がった。

 米国では、銃犯罪が起こる度に規制が叫ばれてきたが、最近ではその叫びは広がらない。むしろ、銃を愛し憲法修正第二条の「武器保有の権利」をバイブルのように掲げる人々の主張が目立つ。銃愛好家で知られるテキサスの共和党リック・ペリー州知事は、フォックス・ニュースで、同州での乱射事件から銃規制を問われ「法を遵守する市民から銃を取ろうとし、それでこの国が安全になるという考えには反対」と話した。また「市民は自衛に銃をもつべきだ」という持論を強調した。

 また、米紙USATodayによると、ノースカロライナ州アシュビルの「ティーパーティ」は、秋の選挙で共和党議員候補者への資金集めと銃擁護をアピールするために、「機関銃パーティ」を9月に開催するという。参加者は25ドルで9ミリメーターの短機関銃、35ドルで自動ライフル銃M−16、50ドルで人気の高いAK-47を30発撃てる。このイベントのアイデアは、米国最大のロビー集団で400万の会員をもつ全米ライフル協会(NRA)からのもの。

 AK-47まがいの銃は買えるが、これらの銃は軍隊で使用されていて一般市民は所有できない。「真のアメリカ人は機関銃などをぶっとばすのが好きなはず」と主催者側は言う。このグループの広報課は、「もしコロラドの映画館での乱射でも、もし誰かが武装していたら、犠牲を最小にくいとめられたかも」と話す。この論理でいけば、警察など不要。自分のことは自分で守れ。映画館やレストラン、いたるところに銃を携行し、いざとなったら銃撃戦をしようということになる。

 「ある日、目が覚めると警察国家の中に住み、住民の銃はすべて没収され自己防御できない状態になるかもしれない」と、NRAは警告を出す。「武器保有の権利」が剥奪されるかもしれないとおどす。NRAは最近ではウエブサイトで「自衛保険」も売り出している。「もし正当防衛で撃っても弁護費用は心配するな」という。

 では、銃規制への市民の反応はどうだろうか。7月末のピュー・リサーチセンターの世論調査では、銃規制と銃擁護が47%と46%と二分。2007年のバージニア工科大学で容疑者を含む33人が死亡した銃乱射事件直後には、60%が銃規制に賛成、反対は32%だったという。銃容認へと傾いている背景には「9・11」以降、米国は危険になったと感じている人が多いことがある。また、長引く不景気もあいまって連邦政府への不信感もある。

 地方には保守で銃を愛する人が多い。アリゾナやテキサスもそうだ。狩猟に加えて西部劇のカーボーイスタイルに憧れる人も多い。銃を所有しない人もいるが、不必要に銃を見せびらかす「銃おたく」もいる。これらの「銃おたく」は、「交通事故死亡者は銃での死亡者より多い。車がよくて銃はなぜ悪い」と意味不明の銃擁護を主張する。

 「銃おたく」は一般市民だけではない。アリゾナ州ロリー・クレイン上院議員は昨年7月、地元紙のアリゾナ・リパブリックのインタビューで、銃問題におよんで、自分のバッグから安全装置のない実弾入りのピンクのルガー380を取り出し、記者の胸に銃口を向けた。このルガーは女性の手の平に入る程の小さなピストル。「かわいいでしょ」と言い「心配しなくてもいい。手を引き金にかけていないから」と言ったという。

 後に、この話に市民銃クラブから非難の声が上がった。実弾入りであろうがなかろうが、銃口を誰かに向けること自体常識ではあり得ないこと。クレイン氏は外出時には常に銃を携行。法で禁止されている州議会議事堂にまで銃を持ち込んだことでも有名だ。議事堂玄関のセキュリティーに止められたが、「自分は議員。もちこめる」と強硬に言いはった。

 確かに、銃社会米国で何が起こるかわからない。いつ誰に銃口を向けられるかわからない。最悪を考えて備えることは必要であろう。しかし、それは時と場所による。たとえば、人里離れたマウンテン・ライオンが現れそうな場所でキャンプするのならば必要だろう。だが、州議会議事堂のセキュリティーのある場所で、議事堂警官が待機している場所で、「自衛」と銃を持ち込む必要があるのか。

 危険だから常に銃を携行。寝る時も銃といっしょ。これは「銃おたく」というよりは、パラノイアともいえるだろう。また「私が持つといったら持つ。州法なんか気にしない」という態度は傲慢としかいいようがない。だが、クレイン氏はまだ議員であり、その姿勢は変わらず、かつ支持する人も多い。

 年々多くの州で銃規制は緩んでいる。ピストルを隠して携行するのに許可書もトレーニングも不要とする州が増えている。このような銃依存社会で、腰のすわった銃規制など起こりそうもない。昨年10月のギャラップ 社の世論調査では米国で住民の約半数が銃所有、2億丁以上の銃が一般市民の家にあるという。NRAなど銃擁護推進派は「銃を持ち法律を遵守する市民は、犯罪も防げる」という。しかし、乱射事件を起こしているのは合法的に銃や銃弾を購入した「善良な市民」。その「市民」が狂気に満ちた行動に出る。そしてその「市民」が「狂人」となるのをふせぐ手だてもない。

マクレーン 末子

ブロッガー。2000年に渡米、現在アリゾナ州に在住・・・続きを読む

11 responses to “「もっと銃を」米銃依存社会の恐怖”

  1. 大山晃平

     全米ライフル協会がロビイストとして、銃規制の為の最大のネックですね。
     確か銃による死者のほうが車の事故で死ぬ人の数を上回っているというデータを見た事がありますが、実際どうなんでしょう。共和党が選挙に勝ったら、またまた戦争があちこちで、銃を売り歩く死の商人が闊歩するようになるでしょう。どうして米国(共和党)は世界紛争の監視者という役割を捨てられないのでしょう。財政赤字解消と言いながら、軍拡予算は絶対減らさないで。

  2. まさ

    ご無沙汰してます。
    ああ、またかという感じですね。笑っちゃいます。
    アメリカの銃の論理からすると銃が無ければ権利が行使できないと言う事でしょうかね。
    開拓時代そのままの論理がまかり通っているのでしょうね。
    銃が公然と所持を許されている国って世界にいくつあるんでしょうね?
    乏しい知識からするとアメリカ以外ないような気がします。
    それでいて国内の治安が悪い国っていくつあるんでしょうか?
    銃が無ければ治安が悪い、自衛が出来ないってかなり無理があるような気もしますが。
    以前にも書きましたがマクレーン末子さんには申し訳ないのですが、結局チキン野郎の国ということになりますね。
    どこかのサイトで見た記憶があるのですが、マンハッタンでは銃の所持は規制されているのでしょう?ということは、金融寡占連中には銃は無用のものであり、危険極まりないものという認識があるということになりますね。論理飛躍してますでしょうか?
    それ以外の地域は銃で死のうが殺そうが知ったこっちゃない、勝手にやっていろということなのでしょうかね?
    ロリーとか言う議員も、はっきり言って薬物依存症やセックス依存症と同じ銃依存症患者ですね。何を言っても無理だと思います病気ですから。銃賛成派の多くが同じ症状なのかもしれませんね。
    なんか真面目に考えることさえ馬鹿馬鹿しくなるような銃社会に感じます。

  3. まさ

    あ!すみません、名前が違っておりました、以前はmasaで投稿してたものです。
    「まさ」に変更させていただきます。

  4. まさ

    マクレーン末子様

    またまた銃の被害がでましたね。ハローウィンは鬼門のようですね。
    しかも今回は少女をショットガンで撃つと言う荒業。
    いくらスカンクの格好をしていたからといって大きさや動きなどを確認しなかったのでしょうか?
    面倒なものはとりあえず殺してしまえば事足りるという発想でしょうかね。
    アメリカの銃への耐性は凄いものを感じます。

  5. まさ

    やはりというか、また銃での惨劇が起きておりますね。
    日本のニュースで銃での惨劇が起きたから銃規制の動きが出るのではと思っているようですが、まあ無理でしょうね。
    アメリカでのインタビューも、銃を規制しろという意見とだから銃で武装しなければならないという意見が放映されておりましたが、子どもやペットにまで銃を持たせようと言う事なのでしょうか?
    銃を取り上げられたら、何を持って無法者に立ち向かえば良いのかと言う事なのでしょうか?
    それとも、頭のいかれた連中が多いか、政府や警察、軍は信用出来ないから武装しなければと言う事なのでしょうか?

  6. まさ

    マクレーンさん、おかえりなさい。

    まずは、日本の選挙から。(あくまで私見ですので)
    政権交代は、予想される想定内の事と言わざるを得ませんね。
    あまりにも民主党の政権運営が酷すぎた、内部のゴタゴタも酷かった。
    公約は守らないは、公約とは真反対のことはするはで、国民の怒りを買ったというのが本当ではないでしょうか?
    しかし、自民党とはいえ地元に有力な候補者が居ない地域では落選しましたし、比例代表区では、前回の選挙となんら変わらない数しか取れておりませんから自民党への国民の圧倒的な支持ではないと思います。
    私自身、小沢さんをかっていたので結果的には残念な結果になりました。
    余程メディアの影響が国民に染み込んでいたと勝手に思っております。
    投票率の低さは、北海道東北に関しては荒れた天候もありますし、年末に向けての行事や買い物と、全体的に政治や政治家に対するあきらめ感もあるかと思います。
    更に今回は自民党や日本維新の会などの右極化傾向がにじみ出ており、それにまるで呼応するかのように北朝鮮のロケット発射がありました。
    一部では、自民党政権を後押しするための某国からの支持で北朝鮮が上げたとも言われております。また、マスコミの偏向報道が大勢は決まったかのような報道ぶりで有権者の意欲を削いだとも言われております。
    何れにしても、国内にいるとまるで誘導されるがごとくメディアと国内外の動きが出来ております。
    アメリカから見たこれらの日本の選挙はどのように映ったのでしょうか?日本では聞こえてこないよな報道や情報はありましたでしょうか?

    さて、銃乱射事件の件ですが、その後も乱射事件は起きていたようですね。
    こうなると、住民同士の不信感が増大しないのでしょうか?
    一部の州では危害が加えられると判断して撃っても罪に問われない法律が通ったとのことも聴きました。多分大多数の人たちには危害が及ぶことはないと思いますが、行き着くところまで行き着かないと無理なのでしょうかね。

    それではまた新しい記事を楽しみにしております。
    日本にいて気になるのは、中国韓国の日本バッシングによるアメリカ国民の対日感情の変化ですかね。

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