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黒人少年射殺事件の波紋ひろがる

 フロリダ州で17才の黒人少年が、先月ヒスパニック系白人男性に射殺された。男性は正当防衛を主張し、拘留もされず放免となった。少年は丸腰で、男性はピストルを携行し少年の後をつけていった事実がわかるにつれ、正当防衛を認めた警察の不当な対応に怒りの声が上がっている。正当防衛か、人種差別によるヘイトクライムか、事件は問題を投げかけ、全米で正義を求めた抗議活動が広がっている。

 フロリダ州は数年前に新銃法を可決。全米ライフル協会に後押しされ可決に至ったいきさつがある。新法では、もし殺される、あるいはひどく身に危険を感じたならば、状況から逃れず相手に立ち向かっていく権利を擁護している。前法では、銃かナイフで脅かされると感じた者は、もし可能なら状況からのがれるべきだったが、新法では身を守るためなら、銃やナイフを奪い取って使用してもいいという。

 ということは、もし目撃者がいなければ「死人に口なし」で、身に危険を感じたから撃ったと正当防衛を主張すれば無罪になりえる。この新法が可決後、フロリダでは正当防衛による殺人件数が3倍になったという。

 複数の米メディアによると、ジョージ・ジンマーマン容疑者は、サンフォード地区の自警団に属し、2月26日事件当日も地区住宅街を車で巡回していた。フード付きスウェットシャツを着ていた高校生のトレイボン・マーティンさんが歩いているのを見て、不審者がいると警察に電話。

 警察は駆けつけるから何もするなと、ジンマーマン容疑者に話した。しかし、同容疑者は車からおり、マーティンさんの後を追った。マーティンさんは友人に、男から危害を加えられそうだと携帯から電話している。

 胸を撃たれて死亡したマーティンさんは、コンビニから父親のフィアンセの家へ帰る途中。手に持っていたのは、キャンディの小さな袋とアイスティーの缶。犯罪歴のない模範的な高校生だったという。

 一方、ジンマーマン容疑者は05年7月に警察官相手に暴力沙汰を起こしている。隣人によると犯罪に固執し、特に若い黒人男性を目の敵にしていたという。自警団にいるということもあってか、2011年46回も警察に電話している。

 ジンマーマン容疑者は113キロ、マーティンさんは63キロ。警察の何もするなという警告を無視し、マーティンさんの後をつけた。これらの状況下で、どのように考えたらこの事件が正当防衛で片付けられるのだろうか。

 事件後の警察の処理も大きく取り上げられている。捜査でサンフォード警察は、ジンマーマン容疑者に薬物・飲酒テストをしなかった。しかし、少年の死体には薬物テストを行った。少年が助けを求めているのを聞いた目撃者が3人いる。重要目撃者の「少年の助けを呼ぶ声を聞いた」という証言に、警察はそれが容疑者の助けを求める声だと訂正した。

 サンフォード警察は、「正当防衛という主張に何ら問題はない」と、3月12日には捜査を終わりにさせる予定であったという。十分な捜査もせずに男性を無罪放免した警察の対応は、人種差別と非難されても仕方がないだろう。

 警察の言い分に納得できないマーティンさんの家族や友人が、メデイアや嘆願サイトに呼びかけ全米ニュースとなり、やっと司法省は事件の捜査に乗り出した。22日には批判を受けて、サンフォード警察署長が職から離れると声明を出した。23日オバマ大統領は事件へのコメントを求められ、「もし私に息子がいれば、トレイボンのようだろう」と、被害者の両親の気持ちを考慮する発言をしている。

 嘆願サイトで、州地区検事に事件の再捜査を呼びかけるページが立ち上げられてから、今までに180万以上の署名が集まっている。毎日20万ほどの人々が署名している。21日ニューヨークを皮切りに、全米各地で正義を求める抗議集会やデモが行われている。今後もデモは拡大しそうだ。

 この事件は色々な問題を提起している。まず、正当防衛をどのように捉えるのか。米国では防衛用といいながら、襲撃するのかと思うほどの銃や弾丸を保有している人も少なくはない。周りの者はすべて自分を狙っていると被害妄想を膨らませ、「撃たれる前に撃て」とかえって攻撃的になる人もいる。ジンマーマン容疑者の場合、人種差別を背景にした被害妄想がなした事件ともいえそうだ。

 全米ライフル協会などは、危険に備え銃を持つべきと煽っている向きもあり、銃離れどころか銃の販売は伸びている。私の住む田舎町では、この10年で一度も銃犯罪がない。それでも住民の98%は銃を保有している。日中、近くの店や散歩に行くのに、銃携行は行き過ぎだと思うが、自分の身を守るのは自分だけだと思うようだ。

 このような事件が起こるたびに銃規制が叫ばれる。現在、銃を社会から取り除くのは不可能だが、正当防衛も含め法律の知識と実務トレーニングの義務化が各州で実行されるべきだろう。

 とは言うものの、最近銃法は緩和される傾向にある。簡単に銃は購入・保有できる。アリゾナ州でも、ピストルを隠して携行するのに許可書も不要になり、トレーニング参加の義務づけがなくなった。被害妄想者に銃をもたせる怖さを今一度考え直すべきだろう。

マクレーン 末子

ブロッガー。2000年に渡米、現在アリゾナ州に在住・・・続きを読む

5 responses to “黒人少年射殺事件の波紋ひろがる”

  1. hatehei666

     病んだ米国の銃社会の悲劇ですね。銃法規制緩和の動きは憂うべき事態です。

  2. masa

    だって、ライフル協会は建国以来の既得権益団体の協会でしょ?
    さて、いままでマクレーンさんのコラムにコメントを書いていて思ったのは、私の考え方が間違っているかもしれませんが、殆どは一部の利益を貪る連中の意のままだということ。
    利益を得る為には紛争、戦争、飢餓、殺人、犯罪、環境、疾病、健康、汚染は関係ないということ。
    逆にそれらは儲ける為の仕掛けとして有効に機能している。
    欲しいものはこれらを駆使して手に入れる。
    安定は不安定に、安全は不安全に、教育はさせない、テレビと映像で洗脳する、エンターテイメントはある意味洗脳技術とも言えるかも。
    こういった中でアメリカの銃社会は構築されているように思われてなりません。
    取り締まり側だけでなく犯罪者に銃を持たせ、一般市民に銃を買わせる。
    当然どこが儲かるか。

  3. masa

    コメント頂き有難うございます。
    まあ、ちょっと極端なコメントになったかもしれません。ご容赦の程を。
    最近私はこう思うんですよ、
    国家とは国民のために作られたのではなく、民衆を国民と言う単位に囲い込み搾取、管理する為に作られた組織なのでは。
    また、民主主義とは民衆の側に決定権権利が有るかのように洗脳し、義務という名の搾取をするシステムなのでは。
    首相や大統領なんて、結局は権力者のお飾りとしかなりえないのでは?
    官僚は公僕ではなく権力者の僕であり、表の権力構造と裏の権力構造で民衆は都合よく支配されているということかな。

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