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「夢を占拠せよ」運動立ち上がる

 昨年9月ニューヨークで始まり全米に広がった「ウオール街を占拠せよ」市民運動は、各地で下火になってきているが、あらたに「夢を占拠せよ」運動が立ち上がりつつある。人種差別と闘い凶弾に倒れた公民権指導者のマーチン・ルーサー・キング牧師の意志を継ぎ、「ウオール街占拠」と連携して経済格差による差別と闘おうという動きである。

 この「夢を占拠せよ」は、キング牧師の名スピーチ「私には夢がある」から来ている。キング牧師の暗殺から44年、人種隔離政策はないが、経済差別が今大きく問題になっている。「アメリカンドリーム」を達成しようとしても、「持てる者はより金持ちに、持たざるものはより貧しく」という図式は変わらない。

 キング牧師を称え、その誕生を祝う国民の祝日1月16日、米13都市で、アフリカ系米国人教会や公民権運動指導者たちは、連邦準備銀行前で集会やデモ行進を行った。「夢を占拠せよ」運動の始まりである。今後全米に向けて運動を広げ、4月にはワシントンで大集会を開く予定だという。

 同運動は3つの具体的な要求リストを掲げている。家屋差し押さえの一時停止。連邦政府の大学教育への補助金増加。職業訓練や雇用創出に向けて金融機関によって1000億ドルの資金が設置されること。

 もしこれらの要求が2月14日までにかなえられなければ、牧師たちはそれぞれの教会会員に大手銀行口座から、30ドル以上引き出すように求める。また、会員に信用組合や地方銀行に預金を移すように求めるという。2008年リーマンショック時に、救済されたメガ銀行へ市民からの怒りのメッセージを突きつけようというねらいである。

 大手銀行の口座解約という試みは、昨年11月5日全米で行われた。ロサンゼルスの画廊経営クリスティン・クリスチャンさんが9月末フェイスブックで呼びかけた「バンク・トランスファー・デイー」運動がそれである。

 バンク・オブ・アメリカがデビットカード使用者に新たに手数料を徴収すると発表し、クリスチャンさんの怒りが爆発した。同銀行は、リーマンショック時に政府から救済された銀行の一つで、昨年は収益を上げている。

 この「バンク・トランスファー・デイー」は、99%運動グループも参加して功を奏した。信用組合全米協会によると9月29日から4週間で65万が新規口座を開設。これは昨年1年間の新規開設数を上回った。結果的にバンク・オブ・アメリカは手数料徴収案を撤回している。

 一方、この経済格差是正運動は反米国的で、キング牧師の夢ではないと主張する人々もいる。米国には「勝者一人占め」の考えをもっている人は多い。自分で稼いだお金をどう使おうが、人の知ったことじゃない。貧しいのはあんたが怠けているからという考えだ。

 共和党大統領候補選でトップを走っているミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は、11日NBCテレビ番組で、ウオール街や富と力の分配について質問され、「所得の不平等を叫ぶのはねたみによるもの。人々は億万長者やウオール街の幹部たちを単に羨ましがっている。ねたんでいるだけ」と言った。ロムニー氏の資産は推定で2億5千万ドルとも言われている。

 資本主義の象徴ともされる「ウオール街」占拠から広がった「99%運動」の中で、多くの人は経済格差が拡大していることへの不満や怒りを示してきた。ロムニー氏は「ねたみ」だと言い切るが、米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの最新調査では、約60%強の市民が貧富の間に対立があると回答しているという。この数字は2009年より19%アップしている。

 「99%運動」が盛り上がった頃、このまま大統領選にまで突っ走ってくれるかと期待したが、警察の介入と厳しい寒さで各都市の占拠地も次第に閑散としてきている。春に向けて「99%運動」が再び盛り上がっていくのか。「夢を占拠せよ」運動が「勝者一人占め」を基盤にした社会にどれだけ切り込んでいけるのか。大統領選と相まってその行方は非常に興味深い。

マクレーン 末子

ブロッガー。2000年に渡米、現在アリゾナ州に在住・・・続きを読む

2 responses to “「夢を占拠せよ」運動立ち上がる”

  1. hatehei666

     私もこれだけ盛り上がった「占拠せよ」運動が壮大なゼロになってしまうのかどうか危惧しています。
     最近邦訳で読んだロバート・B・ライシュハーヴァード大学教授の『余震 そして中間層がいなくなる』が、1パーセントの富裕層と99パーセントの貧困層の事を的確に指摘しており、その具体的な解決策も提案していて、マクレーン末子氏の記事とよく似ていました。
     米国保守派クリスチャンたちが、本当に聖書全体にわたり均衡のとれた見方をしていないから、神の擁護される貧者たちの声を代弁して政治家に届けようとしないと憤慨しています。

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