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米「99%運動」にみるエネルギー

抗議集会に出席する群衆 アリゾナ州フェニックスで

 ニューヨークのウオール街に始まり全米へ拡大した格差社会抗議運動は、1か月半たちそれぞれの都市で異なる展開を見せている。大量の逮捕者・負傷者が出る一方、運動を支持する条例を可決した市議会もあらわれている。市によって違いがあるものの、それぞれの「都市を占拠しよう」運動は、ネットを通して連帯の輪を広げているようだ。アリゾナ州都での占拠広場では、数は減ってきてはいるが開始時と変わらない市民の熱気と連帯が感じられた。

 アリゾナ州都フェニックスでは、ニューヨークから4週間遅れて抗議運動は10月15日に市庁舎前広場で開始した。運動は12人の有志から始まり、フェイスブックやツイッターですぐに何千人へとつながった。

 トップ1%が国民総所得の20%を、富の40%を所有するという現実に我慢ならないという市民の不満・怒りから生まれたスローガン「我々は99%」。「これは政治・宗教色のない運動。人々に自分も99%であることを認識させるのが目的」と有志の一人は語った。

 15日の開始から2週間で、広場にはコミュニテイができあがっていた。インフォメーション・センター、医療セクション、フードセクションのブースも設置され、ゴミもきれいに分別されていた。

 開始時には1000人を超える群衆で埋め尽くされた広場には、現在50人から100人がいる。夜を徹しているのは20人程度。ほぼ毎日のように2、3人が逮捕されているという。多くの市同様、公園や広場など公的な場所で寝ることは禁止されているからだ。

 デモ行進などのイベント参加者の半数は20代から30代だが、中高年の参加も多い。何かをしなければと憑かれたように集まった人々の不満や怒りは、1%の大企業や富裕層に向けられている。富が平等に分配されないことへの怒りである。

 プラカードの多くには「銀行はわたしの払った税金で救済された」という言葉が見られる。2008年のリーマン・ショックで救済された銀行は、その後利益を上げCEOには多額のボーナスが支払われている。一方、米経済はそのショックから立ち直れず、失業へと追いやられる市民も増えている。教師という男性が「銀行員の2010年の年収は、平均約36万ドル(約2800万円)。一方アリゾナ州での高校教師の年収は37000ドル(約290万円)」というプラカードを上げていた。

■新しい形の抗議運動
 この占拠運動の特色に毎日行われる「ジェネラル・アセンブリ」とよばれる全体会議がある。ニューヨークのザコッテイ公園でも行われてきたが、実に手間のかかる方法で参加者の合意を得ようとする。51%が49%をおさえつける多数決型民主主義ではなく、一人でも異議があれば合意するまで話し合う。半ば決まったところで、一人が異議を唱えると、また初めからやり直しだ。討議内容は、デモ行進のルートから、喫煙場所をどこにするかなど多岐にわたっている。
 
 その合意に至るまでの方法がユニークだ。マイクなしでスピーカーは半ば叫ぶように一語ずつ言い、皆がそれを復唱する。たとえば「わたしは」といえば、輪の内側にいる者が「わたしは」と続け、輪の外側にいる人に伝える。大唱和することで、集会場所にいる全員に伝えるのが目的だ。
 
 また別の特色は、人々はネットでつながっていることだ。情報は逐次フェイスブックやツイッターで飛んでいく。たとえば、誰かが「水をもっと寄付して」と書き込むと、誰かがすぐに水補給に駆けつけるといった具合だ。

 このネットでのつながりは、各占拠都市内だけではない。他都市との連帯もフェイスブックを通して行われている。フェニックスでは28日、カルフォルニア州オークランドで負傷したスコット・オルソンさんの回復を願って祈りがささげられた。オルソンさんは、イラク帰還退役軍人。25日夜オークランド警察と3000人に膨れ上がったデモ隊との衝突で警察からの催眠ガス弾が頭に当たって重傷を負った。

 参加者の数を考えると、抗議運動はまだ一般市民に十分浸透しているとはいえない。とはいえ、運動が盛り上がりをみせるにつれ、自分も99%なのだと自覚する人が増えているようだ。フェニックスでも一部市民は、抗議者に自宅の風呂を解放したり、トイレを使うようによびかけるなど協力的だ。

 また、市民レベルだけではなく、支持表明を決定した市議会もある。カリフォルニア州アーバイン市議会は、満場一致で抗議者が市庁舎前の芝生でテントをはることを「表現の自由」という観点で許可する決議をした。

 前途は容易ではない。運動が長引くにつれて、占拠している公園や広場での衛生問題などが問題となり、抗議者を強制撤去しようとする市も出てくるだろう。これから冬にかけ、占拠地での寝泊まりには厳しいものがあるだろう。

 しかし、フェニックス占拠を見る限り、集会・デモの中で人々はポジテイブだ。「変革は一晩で起こらない。この運動を何カ月でも続けていこう」という人々の言葉には強いエネルギーが感じられる。不満・怒りをもちながらも、「この国には希望はある」と言い切る。「希望があるから、ここにいる」。「我々は99%」「あなたも99%」というプラカードを掲げ、目抜き通りを走る車にアピールする。「賛同するよ。がんばれ」の意味をこめてクラクションを鳴らしながら多くの車が走っていく。

マクレーン 末子

ブロッガー。2000年に渡米、現在アリゾナ州に在住・・・続きを読む

4 responses to “米「99%運動」にみるエネルギー”

  1. hatehei666

     アリゾナ州都での「占拠せよ」の運動の高まりが良く分かる優れたルポだと思います。米国全体を見ればいろいろ問題があるでしょうが、ここでの整然とした抗議行動と、意思決定の民主的なプロセスは、民主主義が浅くてそこまで行けない日本人には、大いに参考になるのではないかと考えます。

  2. hatehei666

     本当にその通りですね。共和党議員の大半も1パーセントの富裕層の中に入っているのでしょうが、むしろ長期戦で「占拠せよ」の活動家たちの自壊を待っているかのようです。もししびれを切らせば、これが血と大量逮捕を伴う強制排除をオバマ大統領に要請する事態だって考えられますよね。
     ところで日本でもTPP加入交渉の為野田首相が会議に臨みましたが、民主党議員のかなりの人々のみならず、経済の専門家たちや私たちも第二の経済グローバル化で、農業ばかりでなく、健康保険制度の一角瓦解まで生じるのではないかと危惧し、反対の声を上げました。しかし野田首相はほとんど説明責任を果たさずごり押しし、これもまた民主を標榜する民主党のトップ自身に民主主義の何たるかという自覚が全く欠如しているようで、友人たちと共に茫然自失、暗澹たる思いをしています。

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